データフロー解析とボトルネック抽出

業務フロー図を作ることにより発生する問題

ビジネス全体を俯瞰し、流れを把握したいとき、部署間の業務の繋がりを確認したいときには、業務フロー図を作成するのが一般的かもしれません。
業務フロー図では、PowerPointなどの描画ツールを用い、誰が、どの流れで業務を行うかを記述します。現状の業務(AsIs)を全て記述し、そこからあるべき業務(ToBe)へと変更したフローを記述します。スライドで何十枚・何百枚に渡って記述された業務フローを目にします。
ですが、そもそも業務フローを記述する目的は何だったでしょうか。ビジネス全体を把握し、問題の本質を捉えることであったはずです。
沢山のスライドに分かれた業務フロー図は、それらを全て繋げて頭の中で全体を把握することはもちろん、どれがどれと繋がっているのかすら、一人の人間では理解不可能なものとなります。
また、業務の詳細を記述してしまうことで、着目される問題が矮小化し、本来手を打たなければならない本質的な問題に目が向かなくなります。
このように、いきなり業務フローを記述してしまうことには問題が多いのです。

データフローに着目し問題の本質を見極める

ビジネスにおいては、人/モノ/カネなど、重要なものが沢山ありますが、業務全体を俯瞰し、流れを把握したいときには、データの流れに着目します。
ビジネスにとって重要なデータが、どこで生まれ、どのような形で処理/加工され、保存されるのかを、1枚の図として明らかにするようにします。
この、エンタープライズ・データフローの作成が、最初に取り組むべき作業となります。
データは、口頭/紙/業務専用端末/Excel/業務システム/クラウドサービスなど、様々な媒体に保存されますので、どの部署のどの業務で、重要なデータがどこに保存され、誰がどのように処理されているのかを明らかにします。
特に、業務パッケージシステムを導入している企業では、業務上重要なデータはパッケージシステムに入力されず、Excelファイルやサブシステムで記録されているケースが多いため、注意が必要です。
業務を理解している現場の担当者にヒアリングを行い、業務の本質は何か、それを表現しているデータは何か、を明らかにすることで、問題の本質も見えてきます。

業務とデータの流れを理解しボトルネックを抽出する

事務部門、特に現場の支援部署などでは、データを集計/加工するための業務コストが多く掛かってしまっているケースが見られます。
経営層からは、「あんなに人が必要なのか理解できない」「事務部門に人が沢山いるので減らしたい」などの声を聞くことがあります。
実際、そういったケースでは、業務に費やす時間=業務コストの8割から9割は、単純なデータ処理作業に費やしているものです。
住所や連絡先の成形をしたり、注文明細のデータチェックをしたり、売上データの集計をしたりなど、営業や売上など業務上必須であるものの、そのままでは使えないデータについて、チェック/加工/集計などの作業に時間を取られてしまいます。
その場所はデータが滞留し、事務コストが掛かっているボトルネックであり、業務上も重要なポイントになります。
ただし、その部署にだけ着目しても、建設的な解決策を得ることは困難です。
データの発生から最終的な処理/保存までの流れを捉え、「そのボトルネックが生まれる原因はどこの業務にあるのか」に注目します。
そのようなアプローチで、問題の本質を明らかにします。
また、これらのステップは、経営層にも、現場の業務担当者にも、ディスカッションを通じて理解を深めてもらいます。
現場の業務担当者は、自部門の改善しか権限が無いケースが多く、業務全体をまたがった問題点の指摘や改善案の立案を担当する部署や責任者が定義されていない、というのが一般的な企業ですので、経営層の理解は必須になります。